見出し画像

学生インタビュー「あなたは何が好きですか?」【前編】

多くのCGやマルチメディア分野の関係者たちが競い合う論文コンテスト「NICOGRAPH2022」で「デモ賞」を受賞した、情報学部4年生の兼松 美羽(かねまつ みう)さん。来場者たちの注目を集めた彼女の研究内容について話を伺ってみると、その背景には、彼女が考える情報学部の魅力と専門だけに捉われない「もう一つの分野」の視点がありました。

Interviewee Profile
【名前】兼松 美羽(Miu Kanematsu)
【出身地】静岡県
【学部学科】情報学部情報学科(4年生)
【出身校】富士東高等学校
【趣味】絵を描くこと、バレーボール

研究テーマは動くキューブが生み出す「影」

広報:まずは「デモ賞」の受賞、おめでとうございます。

兼松さん:ありがとうございます。

広報:今回の「NICOGRAPH2022」について、出場の経緯を伺えますか?

兼松さん:出場のきっかけは、自身が所属する研究室の尼岡 利崇先生からの紹介でした。夏休みから研究制作に着手し、約3ヶ月間に渡って準備を進めてきました。

◆NICOGRAPHとは◆
NICOGRAPH」は、芸術科学会が主催するCGやマルチメディア分野の論文コンテストです。CG、形状モデリング、アニメーション、メディアアートコンテンツなど様々な分野の論文発表やデモンストレーションが行われており、コンピューターグラフィックス関連の展示会としても人気を博しています。

広報:研究内容はどのように決められたのですか?

兼松さん:エントリーしたのが4年生の夏ごろということもあり、卒業制作に関わるテーマを扱いたいなと思っていましたが、具体的な内容については、夏休み前に尼岡先生と話し合いました。情報学部で学ぶ私ですが、子どもの頃から建築分野にも興味・関心があったため、先生と話していく中で「物体の影」を扱った研究に決めました。

広報:影ですか?

兼松さん:はい。一般的にはシャドーアートと呼ばれる表現技法が有名です。私の研究発表では、プログラミングで動く複数のキューブ型ロボットにライトの光を当てることで、人の輪郭などのシルエットを影で生み出しました。私はこれを「影ディスプレイ」と呼んでいます。

【上】兼松さんが制作した人の横顔の輪郭に見える「影ディスプレイ」
【下】プログラミングで動くキューブ型ロボットの様子(動画※音声無し)

広報:とても面白い研究ですね。今回の研究発表ではどのような点に注力されたのですか?

兼松さん:今回、中でも頑張った点は「デモ作成」です。研究成果を文章だけでなく視覚的に伝えることに注力しました。NICOGRAPGHは、論文や作品発表を口頭発表とポスター・デモ発表に分けて発表するコンテストです。その中で私はポスター発表とデモ発表を行いました。出場者たちは個人ごとに割り当てられたブース内で、自身の研究内容を紹介したポスターを用意し、来場者たちへ成果を説明します。また、希望者は申請することでポスター発表に加えて、デモンストレーション発表が行えます。

今回私が注力したのも、このデモンストレーション発表です。ポスター発表だけでも良かったのですが、さまざまな知見を持つ来場者たちと意見交換ができるせっかくの機会。実際に自分の作品を見てもらった方が、自身の研究成果をより理解してもらえますし、来場者との議論を深めるためにもデモンストレーションは必要だと考えました。

唯一大変だった点を上げると、デモ作成を取り入れたことで発表時にエラーが発生しないよう、念入りな準備が必要だったこと。コンテスト直前までデモ作成の準備をしていた時は「まずい、間に合わない。。。」と何度も思いましたね。(笑)

広報:今回の「デモ賞」受賞には、そのような背景があったのですね。

兼松さん:そうなんです。制作途中で光を当てるキューブが想定通りに動かない事態が何度も発生し、発表直前まで悩まされました。

広報:キューブとは、発表で使われた四角い箱のことですね。

兼松さん:そうです。このキューブは、プログラミングで制御可能な特殊なモノです。PCで指示を与えることで、音を鳴らしたり、指定した位置に移動させたりできます。

広報:兼松さんは普段、どのようなプログラミング言語を扱われているのですか?

兼松さん:今回の発表では、キューブを動かすために「C#(シーシャープ)」を学びましたが、これまでの研究ではAR(拡張現実)アプリの開発がメインでしたので「Swift(スウィフト)」を扱うことがほとんどでした。 

「NICOGRAPH」授賞式の様子

プログラミングの面白さは
「何度も味わえる」自分の成長

広報:さまざまなプログラミング言語を学ばれているのですね。兼松さんは昔からプログラミングが好きで、情報学部へ進学されたのですか?

兼松さん:実を言うと、高校生の頃は情報学部に強い興味があったわけではなく、当初は建築学部への進学を検討していました。子どもの頃から建築士に憧れがあり、住宅の内装替えやリノベーションに興味があったため、漠然と建築学部を進学先に考えていました。

ところが高校3年生になり、いざ受験してみると思うように行かない厳しい結果に直面。建築学部以外の道を探すために、改めて担任の先生へ進路相談したところ、自分の趣味を活かした進学先として薦められたのが情報学部でした。

たしかに私は、小学生の頃からタイピングゲームが好きだったこともあり、高校時代も他の人よりPCに触れる機会が多かったです。とはいえプログラミングは全くの未経験。入学後、勉強についていけなかったらどうしようと不安もありましたが、大学卒業後の社会を想像した時、IoT化が進む現代において、情報学の知識・技術はこれからもっと必要になるはず。そう考えた私は、情報学部への進学に舵を切り、明星大学情報学部を受験しました。

大学入学後から本格的に情報学について学び始めたわけですが、勉強してみると、これがとても楽しいんです。 

広報:兼松さんの思う情報学部の楽しさとは、どのようなところでしょうか?

兼松さん:一言でいうと「自分の成長が目に見えて実感できること」です。私が初めて開発したのは、ARアプリケーションでした。こういう機能をつけてみようと挑戦するも、PC画面に表示されたのは大量の「エラー」の文字。原因が何かも分からない、表示されている意味もよく分からない中で勉強を進めていました。

ですが、少しずつ調べていくうちに、知識が身につき、原因が分かるようになることで、一つずつエラーが消えていきます。最後のエラーがPC画面から消えた時、自分が作りたかった機能が画面上に表示され、なんとも言えない「達成感」を感じたんです。

その時に初めて、プログラミングって楽しいなと感じました。プログラミングが上手くできた時、自分の積み重ねてきた努力が「目に見える成長」として実感できる。この感覚を何度も味わえるのが情報学部の面白さだと思います。

広報:たしかに、プログラミングを通じて自分の成長が目に見えるのは、情報学部ならではですね。

兼松さん:そうなんです。ですが情報学部の魅力は、目に見える達成感だけでなく「専門に捉われず、自分が興味のあることを研究できる」点にもあります。 

かくいう私も、大好きな建築の分野について情報学の観点からアプローチできないかと考え、建築と情報の分野を組み合わせた研究に挑戦中です。現在は尼岡研究室で卒業研究制作を進めながら、建築学部の研究室にも参加しています。

【後編】へ続きます。