卒業生の今とあの頃(33)造形芸術学科卒業 白井 晃平さん
ー明星大学卒業生の「今」と「あの頃(在学当時)」を写真とコメントで綴りますー
白井 晃平<Kohei Shirai>
2008年 明星大学 日本文化学部 造形芸術学科(現:デザイン学部デザイン学科) 卒業
現在の職業:株式会社日立製作所勤務(プロダクトデザイナー)
趣味:海外旅行、建築巡り、アート鑑賞
白井 晃平さんの今ー
プロダクトデザイナーとして、国内外問わず地域の人に寄り添うデザインを実践
現在はメーカーでインハウスのプロダクトデザイナーをしています。
家電製品のような家庭向けのモノから、インフラに関わる公共機器まで幅広い分野の製品がデザインの対象です。
入社してから色々な製品をデザインしてきましたが、中でも海外市場向けの家電製品を一番長く担当していて、当時はまだコロナ禍前で、毎月1回くらいのペースで海外出張に行ったりしていましたね。
私は主に冷蔵庫のデザインをしていたのですが、同じような家電製品でも日本と海外では使われ方や設置場所、デザインの嗜好が異なります。そのため、日本人としての先入観に捉われずに現地の市場をリサーチしたり、生活スタイルを観察することで、その地域の生活や人に寄り添うデザインを実践してきました。
どのような製品をデザインするときも、まずはユーザーを知り、そしてその人の気持ちを想像し、どうすれば良くなるかを考えながら、美しさと心地よさを両立したデザインをめざしています。
最近では、個人的にデザインの相談を受け、大学時代の友人の会社のサービスに関わるデザインを手伝ったり、会社では出来ないデザインをするため個人での活動も広げています。
▲白井さんがデザインした海外市場向け冷蔵庫
GOOD DESIGN AWARD 2020受賞、iF DESIGN AWARD 2021受賞
※白井さんインタビューあり
白井 晃平さんのあの頃①
今につながるプロダクトデザインコースでの学び
大学生活は、プロダクトデザインコースでの活動が最も厚く濃い時間だったと思います。ここでの学びが今の自分のデザイナーとしての基礎のひとつとなっています。物事の捉え方から始まり、悩みながら手を動かしプロトタイピングをし、アイデアを人に伝えるという一連の経験がデザイナーの基本として今でも染み付いています。
また、恵まれていたのが先輩や同級生の存在でした。なぜか私の学年のプロダクトデザインコースのメンバーは男が集中していて、運動部の部活のような妙な連帯感が醸成されていて、課題のたびにお互いが切磋琢磨しながらデザインに取り組んでいました。個性の強い仲間ばかりでしたが、彼らの存在が暑苦しくも良き思い出になっています。TV関係の職に就いたり、不動産屋、声優、工場長、起業したりと、面白い道に進んだ仲間がたくさんいて、社会人になった今でも違った角度から刺激をもらっています。
白井 晃平さんのあの頃②
モーターカーをゼロから作る、「ワールド・エコノムーブ」への参戦
連帯感という意味では、夏休みを利用してプロダクトデザインの研究室から有志で出走していた電気で走るモーターカーのレース「ワールド・エコノムーブ」も思い出深いです。
ただレースに出るのではなく、自分たちでそれぞれの役割を決め、車体を作り、レースに出るまでを一貫して行い、大変だけどとても充実した夏でした。
それまで作品制作で使ったことのない素材や技法、工具などを新しく学ぶレベルアップの機会でもあり、チームとして協力しながらそれぞれが自分の役割を果たしていくことで、連帯感を醸成しつつモノづくりの大変さとやりがいを知る最高の機会でした。
ちなみに、私はレース当日はレーサーとしてみんなで作った車に乗るという責任重大な大役をいただいていました。(結果は振るわずでしたが・・・笑)
白井 晃平さんのあの頃③
デザインとアートを融合させた卒業制作と、大学院への進学
プロダクトデザインを学んできましたが、実は入学当初はファインアートの世界に進むつもりでした。
そのため卒業制作では、工業デザインにアート的な視点を入れ、一見不便なんだけどなんか面白い、なんか心をくすぐる、そんな作品をめざし照明作品を制作していました。
例えば、パズルみたいに揃えないと点けられない照明や立体物の機能を平面におさめたペラペラの紙のような照明、電気はお金という視点に着想を得た鍵のついた照明などです。
この作品作りを通して工業製品としての機能性、審美性だけではなく、心に刺さるようなエモーショナルな価値観やモノに対してのフィーリングをどうデザインするかということを考えるようになったと思います。
その後、もっと感性的な視点のデザインを見て学びたい、作ってみたいという気持ちが強くなり、東京藝術大学の大学院に進学し、デザインの表現を深めてきました。
理論だけではない、人の感性に刺さるデザインは社会人になった今でも自分の中の一番のテーマになっています。