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学長が聞く、学長に聞く―第1回―「考える」って何だろう?(前編)

学生を中心に、教職員、卒業生、地域の方々など、さまざまな人が交わり、学びの輪を広げている明星大学。
そんな「明星人」たちが、日々どんなことを考えているのか。
持ち前の実践躬行(じっせんきゅうこう)の精神でユニークな取り組みを行なっているゲストをお招きし、学長がお話を伺います。

【実践躬行】理論などを実際に自分で実行してみること。言うだけでなく、自立的に実行してみることが大切だということ。

第1回 「考える」って何だろう?(前編)

山中脩也(情報学部 情報学科 准教授)×落合一泰(学長)

突然ですが、みなさんは「考える」ということについて、深く考えてみたことがありますか?山中先生は、教員になってまもなく“考えるとはいったい何だろう?”という問いにぶつかったそうです。その後は、学生やプロジェクトで接する小・中学校の子どもたちに、プログラミング学修を通して「考える、の先にあるもの」に思いを巡らせてもらえるよう、さまざまな角度から仕掛けているとのこと。はたして、どんなお話が聞けるのか。さっそく伺ってみましょう。

コンピュータは考えるための道具である

落合学長 山中先生は、『COPERU PROJECT』という企画の代表を務めていらっしゃいますが、どんなことをしているのですか?

山中准教授 地域社会における「ミライノクラシの共創」をめざして、小・中学生にプログラミングを教えるワークショップの開催や、これから小学校の先生が身につけなければならないプログラミング教育力の向上推進に取り組んでいます。学部や学科、学内外、年齢、専門などの垣根を越えて、さまざまなメンバーが集まっています。

落合学長 学内でも情報学部だけでなく、理工学部や経営学部など多様な学生や教員が集まっているそうですね。

山中先生は、これからの明星大学を表すキーワードのひとつでもある、いろいろな価値観・背景をもつ者が横断的に学びあう「クロッシング学修」をすでに実践していると感じています。プロジェクトを始めたきっかけは何だったのでしょうか?

山中准教授 大学の教員になってすぐに、「探究とは何か?」つまり「考えるとは、いったい何だろう?」という疑問にぶつかったのがきっかけです。当初は学生に問いを投げかける際に「考えてみてください」と言っていましたが、コンピュータの話は非常に複雑で、何を考えたらいいのかわからないという学生も多くいました。そこで、あらめて「考えるとは何か?」を丁寧に掘り下げて伝えていこうと思ったのが発端でした。

プログラミングというと技術的な側面で捉えられがちですが、自ら想像力を働かせて、試行錯誤しながら考えること自体が大事だと思っています。

落合学長 技術を身につけることだけが、主目的ではないということですね。

山中准教授 はい。「考えるとは何か?」を能動的に考えてもらう上で、子どもたちにもわかりやすくなるように『COPERU PROJECT』では3つのワードを掲げています。

書き出そう。アタマの中が、整理されるから。
違いを探そう。驚くことが、潜んでいるから。
意見を伝えよう。新しい何かが、創られるから。

いま小・中学生にプログラミング言語を教えていますが、その子たちが社会に出た時にその言語をそのまま使う可能性はほとんどありません。プログラミングは日々進化していて、情報学部の学生が1年次の必修で習うプログラミング言語ですら、4年後の就職時点ではたぶんそのままでは使わない。 

そういう意味でも、学習を通じてコンピュータの中身や文化を知ったり、人間がどうすれば間違いが起きないかに気づいたり、他の人との協働の仕方を考えたりすることを、しっかり身につけてほしいと思っています。そうすれば、たとえプログラミング言語が変わっても、率先して新しいアプローチに取り組める人材になれますから。

落合学長 なるほど。自分で考える力を身につけておけば、どんな状況でも逞しく(たくましく)対応できる、というわけですね。

山中准教授 今まさに、コロナ禍で答えのない社会になっています。それだけに、みんなで試行錯誤しながら少しでも前に進んでいきたいと思っています。数学とコンピュータを通じて、考える可能性を広げていきたいです。

落合学長 山中先生は、専門の高性能計算や計算科学、数学基礎の教育・研究を行いながら、幅広く活動されていますが、なかでも「考える、の先にあるもの」を大事になさっていることがよくわかりました。

キャプチャ

↑COPERU PROJECTのイベント「プログラミングパークCABA」のひとこま。考えを書き出し頭の整理をする。ほかの人との考えの違いを発見して驚く。意見を交わす中で新しい何かが創造されていく。

大切なのは、Teachよりファシリテート

【ファシリテート】物事が円滑に、容易に進むよう「うながす」「手助けする」こと。

落合学長 山中先生は、「Teach」するより「ファシリテート」することが大切だと考えているそうですが、それは、自発性や内発性を引き出すことを重視しているということ。コンピュータ学修にとどまらず、明星大学の教育に広く言えますね。

だれでも「思う」ことはできます。しかし、その思いを人に伝えるためには論理的な「考え」に高めていくことが必要です。小・中学生であれ、大学生であれ、どの成長段階においても大切な、能動的に「考える」というプロセスに人を導いていく重要性をあらためて感じました。

後編へ続きます

山中先生掲載ご希望写真

↑小大連携プロジェクト「明星小学校放課後プログラミング講座」で、児童を「考える、のその先」に促す山中先生

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COPERUは、Collaborative Programming Education Research Unit
「協働プログラミング教育研究ユニット」の略称。
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