約8,300人もの学生が通う明星大学で、どうして私たちは安全に過ごせているのか?
「明星大学には約8,300人もの学生が通っているのに、どうして事故が起きず、私たちは安全に過ごせているのか。キャンパスの施設をよく観察して、考察して、皆さんの”解”を発表してください。」これは、教育学部教育学科「社会」の授業の中で、担当の佐藤 裕之(さとう ひろゆき)先生が入学後間もない1年生に投げかけた課題の内容です。
佐藤先生はこの課題のねらいについて、次のように語ります。
佐藤先生:この授業は小学校教員を目指す学生が、学校現場で「社会科」を教えるのに必要な「課題解決学習の方法」を理解することを目的としたものです。
授業の最初に、学生から「社会科」の授業に対して持つイメージを聞いてみたところ、「知識を一方的に伝授される」「暗記科目」というイメージを多く持っていることがわかりました。
そこでこの授業では、身近なキャンパスを題材にして学習課題を設定し、自ら調査をし、グループワークを通じて「課題の解」を導き出し、さらにグループ同士でその「解」を共有し合い新たな視点を得るというプロセスを実践させました。
また課題の立て方として、「明星大学の安全施設を調べよう」という打ち出し方と「明星大学では約8,300人もの学生が生活しているのにどうして事故が起きないのだろう」という打ち出し方を比較して、どちらがより課題意識を持ちやすいかを考えさせました。
どのように課題を提示してどのように取り組ませるとよいか、この授業での実践を通じて得たものを、教員になってから活かしてほしいと思います。
学生が発見!学内の安全設備いろいろ
6月8日、約8名ずつにチーム分けされた全10チームが、それぞれ調べた内容をまとめ、その成果を発表し合いました。
ここからは、学生が今回の課題を通して発見した構内の様々な設備をご紹介します。
学生が発見!①バリアフリー対応
・車いす移動の機械やスロープ、手すり
・目が不自由な人の安全を守る点字ブロック、ゴムチップ
・講義室における優先席の設置
学生が発見!②危険防止、災害対策で備えあれば憂いなし
◎構内各所で発見!
・・転倒防止、事故防止(すべりどめ、ロックのかかる机、エスカレーターのブザー)、防災(災害備蓄品、排煙装置、消火器、消火栓、防火シャッター、スプリンクラー、火災報知器、非常スイッチ)、防犯(防犯カメラ、警備員の配置及び巡回)、AED、照明、非常電話、車止め
◎28号館で発見!
・・窓にストッパー(転落防止)、教卓の上に緊急連絡先の掲示、床がカーペットで滑りにくく怪我をしにくい、ガラス面への手すり設置、廊下に電話機
◎大学会館で発見!
・・二酸化炭素消火設備貯蔵容器室(食堂での万一の火災にすぐ対応できる)
◎スターウェイで発見!
・・エスカレーターの上り下りを時間帯で変えている(人流を考慮した混雑防止)、階段に滑り止めがついている、水はけ用の砂利
学生が発見!③コロナ対策
・消毒液の設置
・検温の実施
・座席の間引き、換気
・アクリル板の設置
学生が発見!④構造上の特長
・吹き抜けの構造
・ガラス張りなどで視覚的にも広く、死角を作らずに見渡せる
調査から学生が導き出した「解」
「約8,300人もの学生が通う明星大学で、どうして私たちは安全に過ごせているのか?」という問いに対し、学生たちが調査を経て導き出した「解」をご紹介します。
・建物の特長に合わせて防犯、防災設備を整えているから。
・いつでも、どこでも、だれでも快適に過ごせる工夫がされているから。
・あらゆる可能性を考えて対策されているから。また、それを周知することで、一人一人の注意につながり、事故を未然に防げているから。
・学生が混乱しないように、動線が確保されているから。
・土地や環境、体の不自由な人など、様々なことへの配慮がされているから。周りに山が多い環境から火災への備えも充実していて、”もしも”のための対策が大学全体にされているから。
・生活する人の意識と学校の配慮が嚙み合っているから。
大学の安全を支える、管財チームの久保さんに聞きました
構内の施設設備を維持管理し、日々学生の安全を支えている管財チームの久保 貴光さんにお話を伺いました。
広報:授業でのこのような取り組みと学生の調査を受けて、率直にどう感じましたか?
久保:観察力がすごいなというのが率直な感想です。構内をよく回って現地確認されたことがわかります。
万一緊急事態が発生したときも、構内の安全設備の場所を一度見ていることが役立つでしょうし、今後社会に出たときにもその経験、視点が活きてくると思います。
広報:学生の発見の中で、「よく見つけたな」と感じたものはありますか?
久保:スプリンクラーは設置されている場所も限られていて、また天井をよく観察しないと気づけないものだと思います。
また大学会館の「二酸化炭素消火設備貯蔵容器室」もエレベーターの奥の目立たない場所にあるので、端までよく観察されたなと感心しました。
広報:普段の業務の中で心掛けていること、大切にしていることはありますか?
久保:とにかく学生の皆さんが安全に、快適に過ごせるようにと日々業務にあたっています。
広報:このほか、「実はこんな設備も」というものはありますか?
久保:見た目では気づきにくいのですが、一斉停電などを想定して、蛍光灯の一部にバッテリーが内蔵されています。停電があった場合に30分間点灯して、現場から避難できる時間を確保できるようにしています。
広報:知らなかったです!
今回学生が発見した様々な設備は、もちろん一度設置すればそれで完了というものではありません。いざという時に正常に機能させるために、ひとつひとつの設備に対して定期的な点検・メンテナンスが行われています。
私たちが当たり前に、安全に快適に過ごしている毎日は、このような一つ一つの作業の積み重ねから成り立っています。
水道をひねれば水が出て、授業の開始終了時にはチャイムが鳴る。
こんな「当たり前」を、今までとは少し違う視点で見ることができる。また、万一の非常事態にも、少し冷静な視点で対応できる。今回の課題はそんな機会にもつながったのではないでしょうか。