学長が聞く、学長に聞く―第13回―2023年4月、明星大学に「データサイエンス学環」誕生!※ (前編)
※データサイエンス学環は設置構想中です。ここに記載の内容は一部変更になる場合があります。
篠原 聡(副学長・情報学部教授)×落合 一泰(学長)
明星大学は、「データサイエンス学環」の2023年4月開設に向けて準備をしています(設置構想中)。ワンキャンパスに9学部12学科が集結する総合大学の明星大学。「学環」とは、その強みを生かし、複数の学問分野が融合して学びを提供する、新しい形の学士課程(学部等連係課程 )です。「学環」という新たな学びの場で、学生はどのような力をつけ、どのような人になっていくのでしょうか?「学環」構想の中心メンバーであり、学環長に就任予定の篠原副学長にお話を伺います。
データサイエンスって何? 学環って、何を学ぶところ?
落合学長 いまから約1年後の2023年4月に、明星大学は「データサイエンス学環」を開設します(設置構想中)。今日は、その構想の中心にいる篠原先生にお越しいただきました。この対談をお読みになる方、特に大学受験が間近の高校生のみなさんには、「学環」という言葉は耳慣れないと思います。本学のデータサイエンス学環はいったいどのような学びの場になるのか、篠原先生に分かりやすくお話しいただければと思っています。まず、簡単な自己紹介をお願いします。
篠原副学長 私の専門は応用数学の一分野である離散数学です。組合せデザイン論やその応用研究などをしています。耳慣れないかもしれませんが、組合せデザイン論は情報学では広く応用されている分野なんです。私は2000年に本学の情報学部の助手になり、キャリアをスタートさせました。2013年からは情報学部の教授を務めています。
落合学長 最近、データサイエンスという言葉をよく耳にするようになりました。これにはどのような背景があるのでしょうか?
篠原副学長 社会にはさまざまなデータが溢れていますよね。ITの発展とともに、それがデジタルデータとして扱えるようになってきました。データの取得から、収集、記録までが容易になったということです。次の段階として、それをいかに正しく活用し、より良い生活、より良い人生、より良い社会を作るのに役立てればよいかに関心が集まるようになりました。そうした機運のなかで、データサイエンスという科学分野が注目を集めるようになったんです。
落合学長 そういう流れで来たんですね。篠原先生は、情報技術の発展を長く間近で見てこられました。大学での学びにも、関連した変化がありましたか?
篠原副学長 2015年から4年間、情報学部長を務めました。その間だけでも、目まぐるしい変化がありました。以前は主に情報工学に関係する分野を教えていました。しかし、データを中心に捉える学問の必要性が増してきたころから、カリキュラムの改編が必要になりました。企業の方とお話をすると、これからはデータの扱いや読み解き方が重要になると口をそろえます。そうした社会のニーズに応えようと、情報学部でもデータの活用について学ぶ履修モデルや新しい科目をつくりました。ところが時代の流れはもっと早かった。データについて学ぶこと自体が、情報学のなかだけに収まらなくなってしまったんです。そうした大きな変化やうねりが、データサイエンス学環の誕生につながっていったんです。
落合学長 「情報学のなかだけに収まらなくなった」とは、どういうことなのですか?
篠原副学長 収集したデータをどう扱うのが正しいのか?データは、たとえば経済学の観点からはどう活かすべきなのか?そうした倫理や応用に答える必要が出てきたんです。取得したデータを分析するという情報学だけでは済まなくなったんですね。読み解いたデータを活用する上で、以前より幅の広い知識や技術、経験や哲学が求められるようになったと言えます。
データサイエンス学環で学ぶこと。そして、めざすこと。
落合学長 新たな展開が生じたんですね。そうした大きな変化を前提に、データサイエンス学環では、何を勉強することになるのでしょうか?
篠原副学長 データサイエンス学環卒業生には、発展し続ける未来の社会で活躍し続けてほしい。それには「数理」「統計」「AI」の基礎力と応用力が不可欠です。それらをしっかり身につけられるよう、カリキュラムを組み立てています。さらに、データサイエンスに必要な情報学・理工学・経済学分野の専門知識や技術を融合させていきます。それに加えて、実社会でデータを活用するにあたって必要な倫理面や法的側面などについても学修します。実社会でのデータサイエンスの応用可能性を現場で知るために、実習も用意します。
落合学長 いくつもの学問分野を横断しながら学んでいくところに、本学の「データサイエンス学環」の独自性があるんですね。それは、応用的側面をもつデータサイエンス自体の特色でもありますね。ここまで読んできてくれた方も気になっていると思うのですが、「学環」という名前について説明していただけますか。学環は学士課程であり、卒業すれば「学士(データサイエンス)」という学位を得る。それでも、学部でなく学環という言葉をあえて使う意味は何なのでしょうか。
篠原副学長 先ほどお話した通り、学環は学部等連係課程という新制度を活用した高等教育の仕組みです。では、どういう形で3学部が協力していくのが望ましいのか、また残りの6学部はどう学環に関わっていくのが良いのかを考えた時に、どこかが中心になって求心力を発揮して束ねていくという形ではなく、データサイエンスが全体を包み込む環のような形で全体にかかわっていくという様子をイメージできるといいなという想いがあり、学環と名付けたんです。
落合学長 データサイエンスが明星大学での学び全体を包み込む環の役割を果たすわけですね。とてもいいイメージが湧いてきますね。データサイエンス学環は、どんな高校生に向いていると思いますか?
篠原副学長 数学好きが望ましいとは思うのですが、たくさんの可能性を秘めている高校生には、「新しもの好き」の人に向いていますよ、と伝えたいです。データサイエンスの分野では、新しい手法や技術がどんどん出てきています。学生には、新しいものに対して貪欲に、また積極的に取り組んでいこう!というマインドで学んでほしいと思っています。
落合学長 この対談シリーズでも「好奇心」という言葉がよく出てくるのですが、好奇心旺盛な方にぜひ入学してほしいですね。学環では、入学後にどんな先生が教えてくれるのですか?
篠原副学長 情報学部、理工学部、経済学部の先生が参画してくださるのが特徴です。さらに、数理と統計の専門家を新たに迎えます。
落合学長 様々な分野の先生方から幅広く学べるのですね。本学の教育的特色のひとつは「体験教育」の重視です。インターンシップや実習で、現場の経験を積むということも行われるのでしょうか?
篠原副学長 はい、実習を行う予定です。企業でのインターンシップに関しては、第1期生の学生たちと実績を積みながら、実践の場を開拓していきたいと考えています。リモートでの協働も可能ですが、対面での連携が大切です。多摩地域の企業など身近なところからアプローチを始める予定です。
落合学長 多摩地域は企業の数も多いですし、データサイエンスに対するニーズも高いはずです。本学と包括連携協定を結んでいる機関などとも協力しあい、データサイエンスを必要としている企業や地方公共団体とタイアップしてwin-winの関係を築いていければいいですね。企業の話が出ましたが、データサイエンスを勉強した人は卒業後にどんな仕事に就くのでしょうか?
篠原副学長 AIエンジニアやデータアナリスト、コンサルティングなどが予想されます。しかし、今ある職業というよりは、デジタルデータがあるところ、あるいはこれからデータ化できるような見込みのある分野であれば、学環で学んだことをどこでも活かせます。「統計家」という言葉があるんですが、そこを目指せばいいと思っています。
落合学長 「統計家」…どういう人ですか?
篠原副学長 アメリカでの定義では、「データを収集して、整理、解釈、要約して利用可能な情報として提供するための数学的・統計的理論および手法を開発する、または適用する人」です。
落合学長 そのような人が、今の世の中では強く求められているのですね。
篠原副学長 はい。数学的・統計的理論を活用できる人。単にデータの分析手法を身につけているだけではなく、ちゃんと理論の裏付けを押さえた上で開発ができる人。私たち教員は、そんな学生を育てていきたいとと思っています。
後編へ続きます。