データサイエンス学環 教員対談 【第3回】 「データと理工学の新たな可能性」
2023年4月に開設予定の「明星大学データサイエンス学環」は、これまでの学部や学科とは異なる、まったく新しい学びのカタチです。
「学環」の詳細は、ぜひ特設ウェブサイトで。明星大学が総合大学であることを最大限に活かし、基礎を学ぶだけでなく、データサイエンスに必要な情報学、理工学、経済学の各分野が応用科目として学べることが大きな特色です。
大学受験を控えるみなさんは、これだけ聞いても「何が学べるの?」「どんなところが面白いの?」「将来の進路は?」と、きっと疑問だらけでしょう。
そこで、この対談シリーズでは、応用科目(情報学分野、理工学分野、経済学分野)の各分野に精通した3名の先生に、それぞれの目線でデータサイエンスを学ぶ面白さや未来について語っていただきます。
理工学分野とデータサイエンスの関わりは?
篠原学環長 教員対談の最後を飾る今回は、理工学分野から櫻井先生にお越しいただきました。櫻井先生は、データサイエンス学環の専任教員であると同時に、2023年4月にスタートする新生・理工学部のカリキュラムづくりにも中心メンバーとして携わっています。
櫻井准教授 ご紹介ありがとうございます。本日は、よろしくお願いします。
篠原学環長 早速ですが、理工学分野とデータサイエンスにどのように関わりがあるのか、聞かせてもらえますか?
櫻井准教授 理工学分野とデータサイエンスは、さまざまな関わりがあります。私の専門である環境科学でひとつ例を挙げると、気象予報の精度を高める研究でも役立っています。人工衛星データや地上の観測データなど、多種多様なデータに基づいた機械学習から予報モデルの精度向上が図られています。それ以外の例では、半導体の製造で不良品がどれくらい出るのかを予測する歩留まり解析。製薬分野では、化合物の構造を数値化して、それらの反応を機械学習で解析するようなことも行われています。
篠原学環長 近ごろデータサイエンスという言葉が広まって、一般にも注目されるようになりましたが、理工学分野では以前からデータを幅広く活用していたのですね。
櫻井准教授 そうですね。昔は半導体の歩留まり解析でも、顕微鏡を覗いてエラーを探すなど、人がやっている部分も多かったのですが、最近はAIの活用や機械学習でより効率化が進んでいます。
篠原学環長 データを活用する点で、大きな技術の進歩があったのですね。機械を介してデータを処理することで、膨大な量を扱えるようになったり、研究結果や分析手法がより精緻化されたり、データサイエンスは理工学分野の発展にも一役買っているのですね。
データサイエンス学環で、理工学分野の何が学べる?
篠原学環長 理工学分野とデータサイエンスに、深い関わりがあることはわかりました。では、明星大学に新しくできるデータサイエンス学環では、どのようなことが学べるのでしょうか?
櫻井准教授 入学してすぐ、データサイエンスの基礎的な知識や技術を「基幹科目」で学んでもらいます。その後、2年生から「応用科目」で、理工学分野については学ぶことになります。そこでは、人工衛星のデータ解析やロボット、AI、気候変動の研究、自動運転技術など、さまざまな分野にふれることができます。そこから先は「研究実践科目」で、データサイエンスを理工学分野でどう応用できるのかを考え、それぞれの興味関心に従って経験値を上げてほしいと思っています。
篠原学環長 理工学分野の中でも、幅広く学べるのですね。ちなみに入学を検討している学生のみなさんに、これだけは身につけておいてほしいということはありますか?
櫻井准教授 いま学んでいることが、何に役立つのかを意識して学ぶ姿勢です。例えば微分積分や基礎代数も、ただ計算を覚えたり、知識を詰め込んだりするのではなく、データサイエンスのどこに活かせるのかを考えながら学んでほしいです。教える私たちも、1年生の数学の授業から体系的にわかりやすく伝えていきたいと思っています。
データサイエンス学環、理工学部、情報学部の違いは何?
篠原学環長 ところで、高校生など大学受験を考えている方の中には、「データサイエンス学環」と「理工学部」、「情報学部」のどこに進学すればいいのか迷われている方もいると思います。櫻井先生は、それぞれの違いや特徴はどこにあるとお考えですか?
櫻井准教授 大まかに言うと、データサイエンス学環は、文字通りデータサイエンスを武器に生きていく人。理工学部は、主にものづくりの観点や、理工学に特化した知識や技術を追究する人。情報学部は…。ご専門の篠原先生にお聞きしたいです。理工学部との違いは、どんなところでしょうか?
篠原学環長 AIを例に、あえて差をつけていうなら、主にAI自体の仕組みを考えたり、研究したりするのが情報学部。AIをどう活用するかを考えるのが理工学部、という感じですかね。もちろん、どちらの学部でも研究はしますし、活用の仕方も検討しますけど。進路を選ぶ際のポイントは、自分がどこを軸に学びたいかを見定めることではないでしょうか。
櫻井准教授 明星大学では、それぞれの学部・学環で専門の軸が持てる一方で、お互いの分野に通じる基礎的なことも学べます。なぜそのような仕組みが必要かというと、大学を出た後の現場で、自身の分野の専門知識+多分野の基礎知識が重要になってくるからです。
篠原学環長 その通りです。先ほど出てきた半導体の歩留まり解析の話でも、データサイエンスの専門家が不良品の発生する原因をデータ解析して、製品の最適化は理工学の専門家が行う。その時にそれぞれの基礎的な知識を持っていないと、間をつなぐ会話が成立しませんからね。お互いの理解はますます大事になっています。
データサイエンスを武器に、どんな人になれる?
篠原学環長 最後に、データサイエンス学環で学んだら、将来どんな人になれると思いますか?
櫻井准教授 データサイエンス学環は、データサイエンスを軸に、理工学分野はもちろん、経済学分野と情報学分野など、いろいろな応用先を学修できます。それ以外でも、データサイエンスはスポーツや観光、エンターテインメントなど幅広い業界・業種で活かせます。そう考えてみると、どんな人にもなれるし、活躍のチャンスは広がっていると思います。
篠原学環長 そうですよね。もしかしたら、データサイエンスの力を活かして、これから全く新しい職業や分野が生まれるかもしれないし、データサイエンス学環で学んでいる間に、社会における新たな役割を見つけるかもしれない。あるいは、社会に出てから今までにない価値を創造するかもしれない。少々大げさに言いましたけど、データサイエンスを学ぶ先には、それだけの可能性があると思います。
櫻井准教授 まったく異論ございません。
篠原学環長 この教員対談シリーズでは、情報学、理工学、経済学の3分野に精通した先生にお話しを伺い、なおかつ私自身も情報学が専門なので、どうしても理系の話が中心になりました。しかし一方では、文系の目線から見たデータサイエンスへのアプローチもあると思っています。「データサイエンス?どうせ理系でしょ、私には関係ない」と思っている方も、ぜひ興味を持ってほしいと思います。
櫻井准教授 そうですね。高校でも情報Ⅰが必修化されていたりして、理系・文系の垣根も超えた学修の動きも出てきていますしね。もしかしたら文系・理系という区分けは、もう古いのかもしれないですね。
篠原学環長 まさに、データサイエンス学環から、それらの垣根を超えた新たな人が出てくることを期待したいです。今、これを読んでいる人で、何か新しいことに挑戦したいと思っている人がいたら、ぜひ来てください。
櫻井准教授 ワクワクする未来をつくるため、一緒に学びましょう。みんなで待っています。
明星大学データサイエンス学環の詳しい情報は、こちらの特設サイトでご紹介しています。