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学長が聞く、学長に聞く―第17回―「明星デザイン」は「美大」とちがう!~社会とつながるデザイン力(前編)

土田 俊介 教授(デザイン学部 デザイン学科 学部長)×落合 一泰(学長)

デザイン学部と聞いて、みなさんはどんなイメージを持ちますか?「絵が下手だから」、「センスがないから」と、自分には縁がない分野だと思っていませんか?それは大きな誤解です!「デザイン」にはもっと広い意味があるのです。明星大学デザイン学部で身につけるのは、社会の課題を発見し、解決していく力です。デザイン=「企画×表現」と捉え、モノづくりの現場だけではなく、さまざまな職場で求められる力を総合的に学びます。今回は、学部長の土田先生におこしいだだき、デザイン学部の教育の特色や、どんな力が身につくのかをうかがいました。

アートとデザインの違いは、何ですか?

落合学長 明星大学でデザインを学ぶのは、美大で美術を学ぶのとは異なります。ですから当然、受験生に求める力も美大受験とは違います。カリキュラムを見ても、デザイン学部は美大的ではありません。デジタルメディアの制作、モノやインテリアのデッサン、あるいはファッション描画といった技術を磨く授業もありますが、それは最終プロダクトにつなげる過程としてです。デザイン学部が力を入れているのは、社会ニーズを調査して分析し、独自の発想につなげ、それをクライアントにプレゼンして最終プロダクトにしていく、コミュニケーション力を含めた総合力です。プレゼン力向上のための授業やデザインビジネス論、ブランディング論も開講されていますね。そこにデザイン学部の教育的ねらいがよく示されていると思うんです。

明星大学は美大とちがって総合大学ですから、経営学部や建築学部、情報学部などとの交流や連携ができます。学部での教育に閉じこもらず、違う発想の学生や先生から学べるのは大きいことです。そうした幅広い関心をもつ高校生に、デザイン学部の門をたたいてほしいと思っています。

と、デザイン学部のねらいを私なりにまとめてみました。土田先生、デザイン学部と美大を混同しないために、最初にデザインとアートの関係を教えていただけますか?ふたつはどう重なってどう違うのか?美術やアートという言葉は誰でも知っています。洋画や日本画、彫刻や版画、あるいは美術史などは一般的な言葉です。しかし、デザインについてはデザイナーという職業があることは知っていても、美術とどう違うのか、高校生の多くは知らないかもしれません。
 
土田教授 アートは本来、野放図であるべきです。作者は無責任なくらい自由でいいと思っています。一方でデザインは、クライアントやユーザーが第一で、その要望にどれだけ応えられるかが勝負です。とはいえ、アートにもクライアントのことを考えなければならない側面があるのは事実です。作品が誰かに評価されてお金やチャンスに変換されなければ、その先がなくなってしまいますからね。アートとデザインは、異なる性質のものでありながら、似ている部分もあるんです。

企画×表現=社会とつながるデザイン

落合学長 では改めて、明星大学のデザイン学部には、どのような特色があるのか、教えていただけますか?
 
土田教授 デザインと聞くと、絵を描いたり、色や形を学んだりするイメージを持っている人が多いと思います。でも、明星大学デザイン学部は一味違います。日常の課題を発見し、解決策を考える「企画力」と、それを的確に伝える「表現力」。その融合が、デザインの力だと私たちは考えているんです。
 
落合学長 絵を描くことや色や形を決めるのは、あくまでも課題を解決するプロセスだということですね。
 
土田教授 そうです。デザインの力は、いま社会のあらゆる場面で求められています。社会の仕組みを考える。美しく機能的な道具をつくる。最適な方法でそれを人に伝える。こうしたことをひとつながりのものとしてデザイン学部で学ぶ。それが、さまざまな物事を解決するために役立ちます。
 
落合学長 社会とつながるデザイン力を、学生はどのように身につけていくのですか?
 
土田教授 さまざまな科目が用意されていますが、なかでも必修の「企画表現科目」がカリキュラムの根幹になっていますす。1年生前期から3年生後期まで半期ずつ6つのステップを経て、社会のさまざまな場面でデザインの力を活用するための基礎を学んでいきます。
 
落合学長 具体的な内容をお聞かせいただけますか?
 
土田教授 入学すると、まず「企画表現1」で対話や文章を書く力を身につけます。その後に「企画表現2」で、課題を見つけるために調査・分析について学びます。調査をしたらその記録を言葉で残さなければなりませんから、言葉を鍛えることがすべての基本です。続いて2年生の「企画表現3」で、見つけた課題を解決するための思考・発想について学び、「企画表現4」で意図したことを正確にわかりやすく伝えるためのプレゼンテーション・スキルを身につけます。そして3年生では「企画表現5」で統合する力を身につけ、「企画表現6」で発信について考え、4年生の卒業研究へとつなげていくんです。

デザイン学部オリジナルサイトより(画像クリックで当該ページにリンクします)

 落合学長 なるほど、段階を追って最終目標に向かっていく、と。学生は自分の現在地をしっかり知って課題に取り組むことができる仕組みですね。最初に対話や文章に重きを置くということは、すべてにおいてコミュニケーションの力が大事だということですよね。相手が何を望んでいるかを聞き取り、感じ取るために、言葉や文字、ときには絵をツールとして使っていく。
 
土田教授 はい。最近の企業活動では、クライアントやユーザーからいかに情報を引き出し、課題を発見し、解決していくかが重要になっています。ですので「企画表現科目」で鍛える力は、学生が社会に出てからも求められる普遍的な能力なんです。

企画表現5「立川活性化プロジェクト2022」企画発表会。「クライアント」は立川市役所です。田中準也副市長をはじめ27名もの関係者が来学し、様々な活性化プランを提案する20組の学生プレゼンテーションに耳を傾けてくださいました。
「立川活性化プロジェクト2022」で学生が提案・デザインした横断幕が、実際に立川駅に掲出されました!

デザインの力を活かした、クロッシングの可能性

落合学長 普遍的な能力につなげていこうというなら、他の学問とのクロッシング(分野交差)も取り込みたいところですね。デザイン学部を含め、9学部12学科がワンキャンパスにあるのが本学の特色です。2023年4月には、そこにデータサイエンス学環が加わります。学内だけでも、いろいろなことをクロスさせられそうですね。
 
土田教授 そのとおりです。他学部でもデータの収集や分析をやっていますが、それをもっと伝わりやすい形にしようとするとき、デザイン学部の視点が役立つはずです。
 
落合学長 これからの社会には、さまざまな大きな課題があります。たとえば今後数十年の間に、明星大学が立地する首都圏郊外は、限られた資源を有効活用するために、地域資源循環型社会に移行していくことでしょう。その推進にはどのような発想や仕組みが必要になるのか?理工学部の専門的知識が必要になりますし、経営学部の出番もありそうです。そして、社会の仕組みをデザインするデザイン学部にも無関係ではないでしょう。SDGsやGXもそうですが、社会課題が複合化しているいま、9学部12学科1学環がワンキャンパスに集まる本学の強みを教育に活かすことができる。私はそう信じているんです。
 
土田教授 おっしゃるとおりです。デザイン学部は美的な構成の部分や、伝わりやすい資料をまとめるというところだけを担うのではありません。企画・分析・調査をするところからお互いに違う視点を与え合いながら、協働作業をリードしていく。そうした役割がデザインに求められていると思っています。
 
落合学長 デザイン学部も含め、各学部の特色を活かしながら他の学問とのクロッシングができる明星大学。その実現に向けて、学長としてもサポートを惜しまないつもりです。
 
後編へ続きます。


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