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学長が聞く、学長に聞く―第5回―Why? eポートフォリオ(前編)

菊地 滋夫 教授(学長補佐)× 落合 一泰(学長)

明星大学では、「生涯にわたって学び続ける力」を養います。その基盤のひとつとして、「eポートフォリオ」の整備を進めています。それは、学生のみなさんがいつでもどこからでもアクセスできる、「パーソナライズした学修」を深めるツールです。コロナ禍でオンライン授業の導入が進みましたが、デジタルの活用はこれからが本番。そんな中、なぜ明星大学はeポートフォリオの整備に取り組んでいるのか?学長補佐としてeポートフォリオの整備を進めている菊地先生にお話を伺いました。

【パーソナライズした学修】
⼀⼈ひとりが⾃分の個性や関⼼に気づき、⾃分が学ぶ意味を認識して、モチベーションを持って⾃⼰実現に向かう学びのあり⽅。これまでは、同質的な学修者を⼤量⽣産する近代的な⼀⻫教育が中心でした。それに方向転換を求める、新たな学修観です。

そもそも、eポートフォリオって何?

落合学長 今回は、eポートフォリオに長年取り組んでくださっている菊地先生からお話を伺います。そもそも、eポートフォリオとは、どんなものなのですか?

菊地学長補佐 辞書を引くと、ポートフォリオとは「持ち運び用のケースに入れた書類の束のこと」と最初に出てきます。金融界では金融商品の一覧のことで、ものを創り出すクリエイターたちにとっては、作品集を指します。このように、場面によって異なる使い方をされる言葉です。教育界では、中間レポートや期末試験の結果、学修活動の写真や動画など、学生一人ひとりの学修の過程や成果を集めたファイルのことをポートフォリオといいます。eポートフォリオは、そのデジタル版ですね。すでに導入している大学や高校もあります。

落合学長 そのeポートフォリオを、どうして明星大学での学びに取り入れようとしてきたのですか?

菊地学長補佐 今から13年前の2008年のこと、本学の初年次教育科目「自立と体験1」を構想した時に、eポートフォリオの導入を同時に提案しました。当時、国内でこれに取り組んでいる大学が少なかったのは、準備に時間と手間がかかるからでした。そこで、まずは学生と教員が紙面で学修の過程と成果を共有する冊子体のポートフォリオでスタートしました。eではなかったんです。紙のやりとりにはライブ感があります。その場の雰囲気を共有するのに力を発揮しました。その一方で、保存性の問題が課題として残りました。

その後2016年に、学長になる前の落合先生を中心に、学生が卒業後もライフロングで使えるeポートフォリオについて、本格的な検討が行われました。私はデジタルデータ化して学生が4年間使えるイメージを抱いていたんです。でも、落合先生はさらに卒業後まで見据えておられたんですね。そして、明星大学らしいeポートフォリオを設計して2020年から試行する予定でした。しかし、新型コロナの影響で延期になり、「明星LMS」上で急きょ学修データの蓄積を始めることになったんです。

【明星LMS】
主に授業で使用するラーニング・マネジメント・システム。授業での課題・レポート提出や授業資料の閲覧、また授業に関するお知らせが配信される、明星大学の学修支援システムです。学内外を問わず、インターネット環境があれば利用でき、一部機能を除いて、スマートフォンにも対応しています。

eポートフォリオって、何に役立つの?

落合学長 ここにも新型コロナの影響があったんですね。菊地先生は、eポートフォリオにどんな役目があるとお考えですか?

菊地学長補佐 4つの役目があると考えています。1つ目は、「学生が学びを深めるツール」としての役目。授業などで経験した記録がeポートフォリオです。それを読みなおして振り返り、「ここをこうすると、もっと良くなるかな」と考えて、それを次の行動につなげていく。そうした学修サイクルに、eポートフォリオはとても役立ちます。

落合学長 いわゆる「学びの可視化」ですね。デジタルなら手軽に過去の学びを見直すこともできます。1年生の時に書いたレポートを4年生になって見直すと、自分が書いたものでも他人が書いたもののように客観的に見られます。いい仕組みですね。

菊地学長補佐 2つ目は、「学生が自分の成長を確認し、それを人にも示すツール」としての役目です。eポートフォリオは、成績証明書などでは表現しきれないプロセスに光を当てます。2,000人の学生がいたら、2,000通りの学びや経験がありますよね?うまくいったことも、いかなかったことも、eポートフォリオから取捨選択すれば、教員やクラスメイト、就職活動時の企業にも「これが私です!」とオンリーワンの自分を見せられるはずです。

落合学長 大学での学びのプロセスと結果を学生が自分で管理して、それを「自分の4年間の成果です」と就職活動で示すわけですね。

菊地学長補佐 3つ目は、「学生の成長を教職員が支援するツール」としての役目。ここまで学生を中心に話しましたが、私たち教員もeポートフォリオをどんどん活用しなければいけません。一人ひとりの学びのプロセスを見ながら、アドバイスしたり、相談に乗ったりすることで、学生自身がもっと伸ばせるところや優れているところに気づきます。さらに近い将来、さまざまな学生の蓄積したデータを活用して、一人ひとりに最適な学修を支援することができるようになるはずです。

落合学長 まさに、AIなどを活用したデジタル変革が、大学でもはじまるわけですね。時代の最先端ですね。ワクワクします。

菊地学長補佐 そして4つ目が「教学マネジメントの点検ツール」としての役目です。難しく聞こえますが、要は私たち教員が「自分が教えていることを、学生はどのように理解しているのだろうか?自分の教育活動は効果をあげているのだろうか?」と自分に問い直すのに役立てるということです。学生たちの学びのプロセスを見ながら、教える方も教え方を改善していく。これもeポートフォリオの大切な役目だと思います。

落合学長 学生と教員の両方の学びに役立つものなのですね。これまで学生は、学期末に先生から成績をもらって一喜一憂していました。eポートフォリオは学修のプロセスや成果を学生自身がきちんと自分で管理するための仕組みなのですね。まさに「学修者本位」を目指すツールだということがよくわかりました。

後編へ続きます

学長01

菊地先生01


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